【読書感想文】とんでもなく役に立つ数学

『とんでもなく役に立つ数学』 西成活裕(朝日出版社)


数学の大学教授が高校生12名に行った特別授業をまとめた一冊である。

タイトルからもうかがい知れるが、著者の西成活裕先生は「人の生活に役立つ数学をしたい」という気持ちの強い方だ。

数学を専攻していると聞くだけで、「もはや俗世のことには興味などないのだろう…」と判断しがちなのだが、西成先生の語る数学は、確実に日常に生きている数学だと感じられる。

数学を駆使して渋滞の解消を目指す「渋滞学」を立ち上げたほか、さまざまな企業の課題にたいして数学的な理論に基づくアドバイスをしている著者。

ソリトン理論という考え方を使って、最新のプリンターの設計を助けたり、宇宙ゴミを回収する機械の制御機構に助言したり…高額なシミュレーションソフトでは解決できなかった問題も、数学的思考+直観で解決してきた方だ。

おや、数学者ってかっこいいぞ。

そんな数学者が高校生に語るのは、数学の面白さ、可能性、実用性…そしてなによりも”数学的な考え方”だ。

数学という武器を知っていていても、使い方がわからないのでは意味がない。

何かしらの問題や課題があるとき、どのように考えてどんな数学を使うのか。

その技術の一端を見せてくれる。


本文中には、ベイズ推定やゲーム理論、セルオートマトンなどの難しい分野の話も出てくるのだが、西成先生の話し方が上手なので、わりとすんなり概念を理解できる(できた気になってしまう?)。

それぞれの分野について具体例を出しながら説明してくれているので「ちょっといろんな数学の概念を聞きかじってみたいな…」という人にもおすすめできる内容だ。


最終章、西成先生は高校生ともに「実社会の問題を一緒に数学で考えよう」と提案する。

話し合いの末、課題としてあげられたのが”東京マラソンの出場者3万人をスムーズにスタートさせるにはどうしたらよいか?”というもの。

(そんなん数学で答えだせるの…?)と心配したが、複雑に見える問題を単純化し、計算式を導き出して、想定される数字を入れていくと…魔法のように答えが出てしまうのである。

紙と鉛筆だけあればできてしまうような計算で、課題解決のヒントを見つけることができるとは!

「数学の力おそるべし。もうちょっと勉強しよう」と思わせてくれる、良い刺激になる本だった。


(文字数928)

*-*-*-*-*-*-*-*-*

【800文字読書感想文】

800~1000文字を目安に感想文を書く練習をしています。

文章の書き方について、アドバイスなどがありましたらぜひご教示ください。

*-*-*-*-*-*-*-*-*  


この夏、ひょんなことから子どもたちに勉強を教える機会に恵まれました。

自分の専門分野だけでなく、国語や社会などの質問も飛び交い、連日なかなかの脳トレ祭り…。

そんななかで、自分がほとんど高校数学を忘れてしまっていると気づいたのです。

聞かれた問題に応えられず、しょんぼりして家に帰ったその日に思い出したのがこの本でした。

うーん、数学やりたいぞーー!!

AOSHISHI BUNKO

新潟で活動している青鹿文庫(あおししぶんこ)です。 一箱古本市などブックイベントへの参加、科学書を中心とした読書の記録などをしています。

0コメント

  • 1000 / 1000