【読書感想文】科学者はなぜ神を信じるのか
『科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまで』
三田一郎(ブルーバックス)
科学の歴史(科学史)の本を読んでいると、必ずといっていいほど”科学と宗教の対立”が話題に上がる。
ガリレオの裁判や、ダーウィンの『種の起源』に対する批判などは有名だ。
その一方で、科学者の中には”神”を信じたり、自身の研究の中でその存在を感じ取る、という人もある(”神”は、必ずしもキリスト教における”神”に限らないのだが…)。
一見相反する思想のようにも思えるが、なぜ”神”を信じる科学者がいるのだろうか?
本書は、そんな「科学者と”神”」の関係を考察した一冊。
著者は、素粒子物理学者である三田一郎氏だ。
三田氏はなんと、科学者でありながらカトリック教会の助祭として神に仕える身でもある。
「理論によってこの世の成り立ちを説明する」という物理学と、「神がこの世をつくった」と考えるキリスト教。
その関係を、三田氏は歴史をたどることでクリアにしていく。
第1章は『神とはなにか、聖書とはなにか』。まずはキリスト教における”神”というものを知る。
宗教に疎い日本人にとって、ここの説明は不可欠だろう。
第2章から各章で歴史のはなし。コペルニクス、ガリレオ、ニュートン…と、著名な物理学者とその周辺、その時代の科学と宗教の関係をみていく。
第6章では、量子力学の大家であるボーア、ハイゼンベルク、ディラックらに着目する。
面白いのが、科学者らの会議(ソルベイ会議)のときに行われたという、彼らの会話だ。
教科書を開けば必ず名前を眼にするような面々が、「神を信じるか否か」について議論している。
原子や電子という存在が解明されつつあった時代にあり、しかもそれをけん引してきた科学者たち。
その中にあって、神を信じる人もいれば、科学者としてそれを全面否定する人もいることがはっきりとわかる。
”神”という存在は、どうも一筋縄で解釈できるものではないようだ。
著者がこの本を執筆するきっかけの一つが、自身の講演会時に高校生から受けた、次のような問いだったという。
『「先生は科学者なのに、科学の話のなかで神を持ち出すのは卑怯ではないですか」』
筆者は言う。
『それ以来、私にとっては、私が科学者であることと、神を信じていることが矛盾しているわけではないことを、どのように説明すればよいかが一つのテーマとなりました。』
科学を好む人、宗教を信奉する人、どちらにも興味がない人…いろいろな人が本書を読んでどのような意見をもつのか、聞いてみたいところである。
(文字数1000)
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【800文字読書感想文】 800~1000文字を目安に感想文を書く練習をしています。
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