【読書感想文】スパイスの科学

『スパイスの科学』 武政三男 (河出書房新社)


新型コロナウイルスの流行拡大期間中、家にいる時間が増えた私は禁忌に手を出した。
そう。スパイスからのカレー作りである。

おそらくこの”Stay Home”中に、少なくない日本人が同じことをしていたはずだ。
カレールーを使わずにインドカレーを仕上げる…かっこいいじゃないか。


とりあえず「初めてのスパイスカレーセット」みたいなものを注文したのだが、いかんせん見慣れぬ色・においのものばかり。

ネットで調べた通りの調合で、数度カレーにしてみたのだが…いまいちピンとこない。
いくつも混ぜるスパイスたちに、どんな意味があるのかよくわからないのである。


そもそも、本格的なカレーを食べたことがないから、味の正解がみえない
というか、(こういうことを書くと総突っ込みが来ると分かっているが)根本的に、私はカレーやスパイシーな料理がそんなに好きじゃない。
カレーの好きな家族はいるが、気を使ってか「おいしい」しか言わない…。


スパイスって何なのだろう。
大航海時代を突き動かしたのはスパイスだったのだ。
なんでみんなこぞってスパイスを求めるんだろう。
スパイスを使う料理に対して、私は間違った姿勢なのではないだろうか?

困ったときは本に聞け。
そう思って取ったのが本書である。

『スパイスの科学』。
そう、”科学”は私の領分だ。
味覚や嗅覚は冴えなくても、理屈が分かれば何か見えるはず…!


本書の第一章はずばり「スパイスをめぐる誤解・偏見・勘違い」。

スパイスというのはインド料理などに使われるものばかりではなく、ショウガやニンニク、シソ、玉ねぎなども含まれている。
身近なものなのだ。

そして、スパイスが苦手という人の多くが使い方を間違っているということも語られている。
上手に使えれば、私も好きになれるかもしれない。


そして科学の話。
スパイスのもつ芳香は揮発性の精油成分である。
アルコールや調理中の油に香りがうつるのはそのためだ。
ただし、加熱や酸化、酵素の働きによってそれらは別の成分へ変化する。
調理中にスパイスを加えるタイミングや方法は、それらを織り込んだうえで成り立っている。
また、水溶性の色素などを含むスパイスは酢や水につけて利用することもある…。


この本を読んでようやく見えてきた。
なんで初めにクミンシードを加熱するのか、なんでターメリックは少しでよいのか、辛みはカイエンなのか…はじめから、理論で成り立つ化学の実験だと思えばよかったのだ。

まだ味の正解はわからないけど、化学成分を生かした作品を作っていると思えば楽しい。
私のスパイス料理に対する姿勢は(多分また違う方向に間違っているのだけれど)、やや前のめりになった。


(文字数1078)


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【800文字読書感想文】 800~1000文字を目安に感想文を書く練習をしています。

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AOSHISHI BUNKO

新潟で活動している青鹿文庫(あおししぶんこ)です。 一箱古本市などブックイベントへの参加、科学書を中心とした読書の記録などをしています。

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