【読書感想文】ダンゴムシに心はあるのか
『ダンゴムシに心はあるのか』森山徹 (PHPサイエンスワールド新書)
新書というサイズとキャッチ―なタイトル、そしてダンゴムシという対象の素朴さ…。
私は、かなり気軽な気持ちでこの本を読み始め、そして挫折した。
しかも、3回挫折した。
4回目のトライで読了した今だから言える。
1章でもたもたしていた過去の私よ、その先を読め!と。
筆者は“心の科学”をテーマに活動している研究者。
専攻は「比較認知科学、動物心理学」(プロフィールより)となっている。
”心”に関心を持つ筆者が、「動物に心を見出せるのか」を探る過程を取り上げたのが本書だ。
“心”という、一見抽象的なものをゴールにするという性質上、まずは“心とは何か、どのように定義されるべきか”という話が必要になる。
4章からなる本文のうち、はじめの1章がまるまる“心とは何か”に費やされているのだが、私はここでつまづいた。
なんせ、哲学のような話である。
昆虫を使った実験をイメージして読み始めたら、初めから“心とはなんぞや?”である。
読んでは本を置いてかみ砕き、少し時間がたってからまた読んで咀嚼し…を繰り返し、ようやく4回目で飲み込むことができた(と思う)。
2章からは、実験対象となったダンゴムシの話や、具体的な実験の話。
ここからは1章よりもずっとイメージがしやすい。
ダンゴムシを迷路に入れたり、周りを水に囲まれたアリーナにおき、どんな動きをするか観察するのが筆者の手法だ。
簡潔なイラストとともにダンゴムシの様子が記述される。
実験中にダンゴムシがとった予想外の動きや思わぬ結果に、一つ一つ感心する。
どんな行動をとったかはぜひ本書を読んでほしいのだが、「このダンゴムシはここで悩んだのかな」とか「この子は決意してこういう行動に出たのかな」などと考えさせられてしまった。
なんだかほほえましい…。
と、このあたりでふと気づく。私は今、完全に“ダンゴムシに心を見出している”と。
得られた実験結果は、条件反射や機械的な反応によるものとも少し違う。
筆者は考察を通じて、大脳をもたない昆虫にも心の存在を証明しようとし、もはや読者である私はそれに何の疑いも持っていない。
1章でなかなか呑み込めなかった“心とは何か”が、はっきりとしてくる感じがしたのだ。
これはすごい。ダンゴムシに心はある。きっと。
この本を閉じて、ふと部屋を見渡す。布団やノート、壁掛け時計。窓の外には鳥や庭木が見える。
いつもと変わらぬ景色のはずなのに、私はそれぞれに心があるのかを探ろうとしていた。
日常生活のものの見え方をがらりと変えてくれた本書は、素朴な仮面をかぶった劇薬なのかもしれない。
(文字数1053)
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久しぶり感想文。
仕事がない時はひたすら本を読んでいるんですが…。
1冊読み終わると別の本を読み始めてしまうので、文に起こすを忘れてしまうんですね。
アウトプット+記録のために、もうちょっとまめに書きたいです。
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