【読書感想文】絶滅危惧の地味な虫たち
『絶滅危惧の地味な虫たち』 小松貴 (ちくま新書)
昔から思っていることなのだが、昆虫界隈には人並外れた表現力をもつ人が多い気がする。
虫好きだったことで知られる漫画の神様・手塚治虫、研究者としてだけでなく作家としても有名な養老孟司、フランス文学研究者・奥本大三郎、素晴らしいエッセイをたくさん残した日高敏隆…。
最近では俳優の香川照之が虫愛を前面に押し出す番組をしている。
ほかにも、「すごい表現をするな」と思わせてくれるような文章の著者を確認すると、昆虫好きや昆虫学者であることが少なくない。
ヒトとはかけ離れた姿の生物を見続けることで、常人には至れないような境地が見えてくるのだろうか…。
何はともあれ、私は「虫屋(昆虫好きのひと)のつくるものに外れ無し」くらいの信頼を置いている。
今回紹介する本も、私の虫屋に対する信頼を厚くしてくれた一冊である。
『絶滅危惧の地味な虫たち』。
タイトルの通り、絶滅の危機に瀕している“地味な虫”を紹介している本だ。
鮮やかな蝶や目立つ甲虫、人気のある虫たちは話題に上りやすいが、それ以上に大量の目立たない虫たちが生存を脅かされている。
「わかりやすいものだけ守ればいいのか?目立たないものは保護する必要がないのか?地味な虫にだってこんな魅力があるんだ!」と、著者は愛と情熱を吐き出す。
淡々と(聞いたこともないような)虫が取り上げられるのだが、節々に文学的ともいえる表現が使われており、その都度心を打たれた。
『全身黒っぽいが、よく見ると光の当たり加減で深い海のような青色の金属光沢をたたえる。』(P35)
『アヤスジに比べると派手さに欠ける種だが、滑らかな体表面と落ち着いた色彩は、古代の遺跡から出てきた土偶を思わせる上品さを備えた虫だった。』(P78)
『体色は透き通るような黄色で、模様らしいものはない。アメ細工のようなその胴体からは、細い繊細な脚が生える。』(P258)
これらの言葉の源泉が、普段人間に気にもされないような小さな虫たちだと想像できるだろうか?
地味な虫にだって、姿かたちがあり、暮らし方があり、物語がある。
一度この本を読んでしまうと、身の回りに隠れている無数の物語に思いを馳せずにはいられなくなるだろう。
それと同時に、その多くが地球上から消えかかっているという事実にも。
(928文字)
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【800文字読書感想文】
800~1000文字を目安に感想文を書く練習をしています。
文章の書き方について、アドバイスなどがありましたらぜひご教示ください。
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あけましておめでとうございます。
2020年一発目の読書感想文は、年末年始に眺めていたこちらの本です。
昨年は活動していたようなしていなかったような…いつでもマイペースな青鹿文庫。
今年ものんびりやっていきたいと思います。
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