【読書感想文】150年前の科学誌「NATURE」には何が書かれていたのか

『150年前の科学誌「NATURE」には何が書かれていたのか』 瀧澤美奈子 (ペレ出版)


大学に入って間もないころ、学部の先輩方が「ゼミでは雑誌を読む」と教えてくれたことがある。
それを聞いて私は、すぐざまコンビニに並んでいる週刊誌を想像し、「研究と何の関係があるんだろうか…」と混乱した。…今考えると爆笑ものだ。

先輩方のいう“雑誌”とは“学術雑誌”のことであると知るのは、その後しばらくたってからだった。


“学術雑誌”。
それは、学会や研究機関が定期的に発行する論文集のことである。
(コンビニではまず売っていない)

「論文を発表する」というのはおおむね「いずれかの学術雑誌に掲載される」ことだ。
掲載されるためには、複数の研究者による厳密な審査を通り抜け、場合によっては何度も内容を修正する必要がある。

研究者にとって、学術雑誌への論文が掲載は、研究生活を送る上で越えなければならないハードルのひとつだ。


さて、『NATURE』はそんな学術雑誌の中でもとくに有名で、格式が高く、理系研究者であれば一度は掲載を夢見る一冊である。

世界にはあらゆる分野の科学者がいて各々研究を行っているが、この雑誌にのるような研究は世界にインパクトをあたえるようものだったり、極めて重要と考えられるようなものが中心となる。

そんな『NATURE』がイギリスで創刊されたのが1869年。
この本は、『NATURE』創刊時の出来事や、初期の『NATURE』にどんな文章が掲載されていたのかを切り取った一冊である。

『NATURE』に関するエピソードが章立てでつづられており、読みやすい構成だ。

はじめのころの『NATURE』には、研究者から一般市民までの声が幅広く掲載されていた、というのが面白い。
科学者が自分の研究の紹介をすると、それへの疑問や反論が投書され、紙面討論になっていたのだという。

19世紀末のイギリスといえば、ダーウィンが『種の起源』を発表し、市民を巻き込んだ大激論が勃発していたころだ。
市井の人々も科学の話題に強い関心があったのだろう。


また、文章が掲載された人だけでなく、創刊までの過程でかかわった人々にも興味がわく。
科学史を好む人であればハッとするような人名が次々と出てくるのである。

各研究分野に名を残した研究者たちが跋扈した『NATURE』の世界。
読むほどに彼らの「科学を広める」ことに対する情熱や、『NATURE』の重い伝統が伝わってくる。


本書の最後のページにも印刷されているT.H. ハクスリーの言葉が大好きだ。

「半世紀ののち、好奇心を抱いてNATUREのバックナンバーを読む読者たちはおそらく、笑みを浮かべて私たちがベストを尽くしたことを知るでしょう…」


科学の世界は日々更新される。

それでも、19世紀のイギリスにあった”men of science”の心が、自然科学の礎になった事実には変わりがない。


(1143文字)

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【800文字読書感想文】

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自分で文字制限しておいて、順守できていない~~~

感想書き足りないくらい、面白かったです。

最後の方には「初期のnatureに何度も載った日本人」として、寺田寅彦と南方熊楠のことも書いてあります。

→ NATURE


AOSHISHI BUNKO

新潟で活動している青鹿文庫(あおししぶんこ)です。 一箱古本市などブックイベントへの参加、科学書を中心とした読書の記録などをしています。

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