【読書感想文】恐竜まみれ

『恐竜まみれ』 小林快次 (新潮社)


2019年夏、東京上野の国立科学博物館は連日黒山の人だかりだった。
特別展『恐竜博2019』を見ようと押し寄せた老若男女だ。
この展示でも大注目だったデイノケイルスやカムイサウルス(むかわ竜)の発掘に携わったのが、小林快次先生。

そして本書はこの小林先生の書下ろしエッセイである。

これまでいくつもの大発見をしてきた著者。
そんな日本を代表する恐竜学者の研究生活の一端が垣間見える本とあり、心躍らせて手に取った恐竜好きも少なくなかろう。
ちょうど恐竜博の始まる前に出版されたので、私も予習のために購入した。


本書には、調査のために世界中を飛び回り、荒野で化石を探し続ける著者にしか書けない体験談が詰まっている。
本の冒頭部分からアラスカでグリズリーに襲われかけている時点で、なかば冒険小説のような趣だ。
さまざまなエピソードをとおして、恐竜研究の「厳しさ」と「面白さ」をどちらも伝えたいのだろう。
“ただキツイだけじゃない。ただ楽しいだけじゃない。どちらもあるからやめられないんだ”と、小林先生が静かな興奮をたたえながら語りかけてくる。


また、本文中に時折みられる著者の本音にも注目したい。
ミネラルショーや化石の販売イベントでは盗掘された化石が流通している可能性があるので「売買には100%反対」(P94)。
「日本の恐竜研究では、どうしても重箱の隅を突くようなものが目につく。」(P120)という一言。
「恐竜研究は、人のためになっているのか」(P124)という自問自答。
決してお気楽に恐竜研究をエンジョイしている研究者ではないのだということがわかる。
恐竜や古生物学に限らず、ほかの分野においても当てはまることがあるのではないだろうか?

読みやすい文章なので、恐竜博で興味をもった大人はもちろんのこと、中学生くらいの子どもにもおすすめしたい一冊。
読んだ人は、小林先生の今後の活躍と無事を願わずにはいられないだろう。


(794文字)

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【800文字読書感想文】

800~1000文字を目安に感想文を書く練習をしています。

文章の書き方について、アドバイスなどがありましたらぜひご教示ください。

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ということで、先日の投稿にからめた、小林先生の著書の感想でした。


AOSHISHI BUNKO

新潟で活動している青鹿文庫(あおししぶんこ)です。 一箱古本市などブックイベントへの参加、科学書を中心とした読書の記録などをしています。

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