【読書感想文】空気の発見

『空気の発見』 三宅泰雄 (角川ソフィア文庫)


小さな子どもに「空気ってなに?」と聞かれたら、皆さんはどのように答えるだろうか。「目に見えないけど、いつでも周りにあるもの」?「なくては生きられないもの」?

中学生くらいなら「窒素や酸素などが混ざった気体」くらいには答えられるかもしれない。

1600年ころまで、人々は身の回りにある見えない何か、見えないけれど冷たくなったり温まったり、時には動いて“風”となる実体のない何かを“魂”のようなもの認識し、空気(air)と呼んでいた。
沼に浮かび上がってくる気泡中のガスなど、異なる成分の気体もひっくるめてairだったそうである。

イタリアでガリレオが「空気には重さがある」ということを見出し、トリチェリーやボイルがそれに続くことで、少しずつ空気の正体が解明されてきた。


『空気の発見』は“空気”というものが認識され、その正体が解明されるまでを、科学史の側面からまとめた本。

子ども向けの科学読み物として平易な言葉で書かれており、短い章でテンポよく進んでいくこともあって、科学書が苦手な人にも読みやすい一冊だ。


実は本書、初版発行は昭和37年(1962年)という歴史ある科学の名著である。

2016年にノーベル医学・生理学賞を受賞された大隈良典先生も、幼いころにこの本を与えられ、熱心に読まれたという。


内容の丁寧さや、ストーリーとしての面白さもさることながら、心を揺さぶるのが本書の啓蒙書的な側面だ。
著者は本文の端々で、これから科学を学び、将来を背負う子どもたちへの希望や金言を記している。

世の中の常識が正しいとは限らないこと。
例え地味な研究でも人類が誇る科学にとっての大切な礎になること。
今人間が手にしている英知の裏には、人生を研究に賭した多くの科学者がいるのを忘れてはいけないということ…

何十年たっても科学教育で大切にされている思想である。


2018年には本庶佑先生のノーベル医学・生理学賞受賞で日本が湧いた。

「一番重要なのは、不思議だな、という心を大切にすること。教科書に書いてあることを信じない。」と言い放った賢人にも通底する思想がうかがえるだろう。


(868文字)


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【800文字読書感想文】

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AOSHISHI BUNKO

新潟で活動している青鹿文庫(あおししぶんこ)です。 一箱古本市などブックイベントへの参加、科学書を中心とした読書の記録などをしています。

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