【読書感想文】土 地球最後の謎 100億人を養う土壌を求めて

『土 地球最後の謎 100億人を養う土壌を求めて』 藤井一至 (光文社新書)


植物学、動物学、化学、天文学、気象学、建築学、農学、時には歴史や文化人類学…
「食わず嫌いせずなんでも食べる」とモットーとし、あらゆる本を読んできた私だが、これまでその重要性を薄々感じながらも、ほとんど手を触れずにきたテーマがある。

土”だ

植物は、土のないところには(基本的に)生えない。

植物がないところでは、動物は(基本的に)生きられない。

土の肥沃さは農業の成立を左右し、戦争はいわば豊かな土の奪い合い…そうだ。全部、土が基本じゃないか!

本書を読んで痛感したのが、土(土壌)というものに対する己の浅学さと重要性だった。


世界中の土は、大きく12種類に大別されるという。
腐食の多い黒い土、鉄分の多い赤い土、白い土、茶色い土…いずれも、含まれる成分によって決まる。

作物がすくすく育つ土は、永久凍土が広がる土地や、貧栄養の土地をもつ国が喉から手が出るほど欲しい物。

世界で一番肥沃な土“チェルノーゼム”の豊富なウクライナが、ロシアやドイツの標的になっていることは記憶に新しいところだ。


これまで、このような「土壌学」の本が本屋に並んでいた覚えが、あまりない。
書店で本書を目にとめ、中をちらと拝見した時に惹きつけられたのが、筆者の軽妙な語り口だ。

『大見得を切っておいていうのもなんだが、土は地味だ。その研究者の圧愛も、宇宙飛行士とは雲泥(宙泥?)の差がある。空港で土とスコップの機内持ち込みを謝絶されて肩を落として落ち込んでいる大人を見たことがあるだろうか。』(P5)


ときに職質を受け、ときにジリスにサンドイッチを奪われ、ときに土をなめておなかを壊しながらも、筆者は世界で土を掘り続けた。

なぜなのか?


『100億人を養ってくれる肥沃な土を探すためだ。』(P6)


ただ面白いだけじゃない。土壌学研究の苦労や、現在の地球に残る土壌をめぐる問題についても目を向けさせてくれる良書である。


さて、私たちは、最も身近な自然環境である“土壌”についてどれだけ知っているだろうか?

この本を読んだ後、読者はきっと足元に広がる「ファイナルフロンティア」に触れてみたくなるはずだ。


(871文字)



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AOSHISHI BUNKO

新潟で活動している青鹿文庫(あおししぶんこ)です。 一箱古本市などブックイベントへの参加、科学書を中心とした読書の記録などをしています。

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