【読書感想文】ねじとねじ回し
『ねじとねじ回し』
著:ヴィクトル・リプチンスキ、訳:春日井晶子 (早川書房)
時代が21世紀に変わろうというころ、著者のヴィクトル・リプチンスキはニューヨークタイムズ紙の編集者よりエッセイの依頼を受けた。
テーマは「このミレニアムのベスト」と「最高の道具について」。
つまり、ここ1000年間で人類に大きなインパクトを与えた発明についてのエッセイだ。
大学で建築学の教鞭をとる著者は「ちょうどいい頭の休憩だ」と構想を練る。
そのうち、編集者の想定する”道具”が”tool(工具)”であることが判明し、自身の持つ工具箱をひっくり返し始めるのだが…ここから、人類の歴史と工具をめぐる長い思索の旅がはじまる。
皆さんであれば、”特に重要な工具”として何を思い浮かべるだろうか?
定規、巻き尺、のこぎり、かんな、きり、水準器…どれも木工細工や建築に欠かせない道具だが、なんとこれらは古代エジプトや古代ローマの時代にすでに存在していたという。
つまり、「このミレニアムのベスト」にはあてはまらない。
悩みに悩んだ著者は妻に相談すると、「ねじ回しは?」という一言が返ってきた。
どこの家庭にも一つはあるねじ回し(いわゆるプラスドライバーやマイナスドライバー)。
それらはいつから存在したのか?どこで発明されたのか?
そもそも、ねじ回しを使う目的となるねじ自体が、いつできたのか?
小さな機械にも巨大な建築にも使われるねじとねじ回しだが、ありふれたものだからこそ、その歴史をたどるのは難しい。
古い百科事典をあたり、いつ”ねじ回し”についての記述が現れたか調べたり、肖像画や博物館に収められている甲冑を凝視してねじの存在を確認したりといった過程は、探偵小説さながらだ。
ねじ回しとねじについて知る旅の途中には、それが使われた機械や装置の歴史にも触れることになる。
昔のヨーロッパで人の営みを支えた道具たちが次々と紹介されることで、ねじ回しやねじのインパクトが実感できる。
今やどこの家庭にもある素朴な道具。
その背景にある人類の歴史を(大げさではなく!)見直させてくれる一冊だ。
(文字数819)
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【800文字読書感想文】
800~1000文字を目安に感想文を書く練習をしています。
文章の書き方について、アドバイスなどがありましたらぜひご教示ください。
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この本のことを知ったのは、 理化学研究所と編集工学研究所が合同で主催している、【科学道100冊プロジェクト】の冊子を読んだとき。
このプロジェクトで紹介される本は本当に読みたくなるものばかりで、紹介冊子は青鹿文庫にとってのバイブルのような存在です。
9月19日からは、今年の【科学道100冊2020】が開催されるとのこと!
まちきれないです楽しみです!!!!!
※公式サイトでは過去に推薦された100冊の情報も見られます。めちゃめちゃ情報量ありますので、興味のある方はぜひ・・!!
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